歌が聞こえた。
湖をすべり、流れる草の海を軽々と越えて。
私はそれを聞いて、泣きたくなった。
風が吹いて髪がうるさく顔を叩くけれど、それが何だというのかしら?

歌が聞こえる。
さよならと、海は寒いと、岸はただ灰色だと。
ああ、でもそれが何だというの。
あなたのいないこの大地は、緑に溢れて花が咲き誇っている。
あなたがいなくてもここはとてもとても美しいわ。
さよなら。
さよなら、歌を聴けて嬉しかった。

振り返ってきらめく波の白光の眩しさに私は目を細めた。
その向こうに霧の様に掻き消えたあの船の行方を、私は今も知らない。


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鈴の鳴る場所呟きの歌 (C)isuzu since2001