鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?
『うっるせぇなあまたその質問かよ。お前だっていえば満足なのか、年増女』
うぅるさいわねえ!年増年増言わないでくれる?鏡の癖に生意気だわ。
『10年も毎日毎日聞かれてりゃ嫌にもならぁな。おいらは育ちが悪いんでね、我慢強くねえの。』
なによ、子供で言えば10歳ってことでしょ。
『私は鏡です』
都合いい時ばっかりそういう言い方して!
言っとくけどね、私が話せるようにしてあげたんだから私が親も同然なの。わかる?
『違うね、おいらを産んでくれたのは鏡磨きの初老の爺さんだ。綺麗に磨いてくれたもんだぜ。あんたの小じわまでよく見える』
小じわなんかないもん!
『じゃあ目の隈かな?おいおい、ちゃんと寝てるか年増女』
いい加減にしないと割るよ。
『きゃー暴力反対!最低!そうやってなんでも力で解決しようとするのが人間の業ってやつ?』
トンニャ、おいで。
『あ!やっぱりそうだ!またあのタオルの化け物で俺の呼吸を止める気なんだ!』
トンニャはタオルじゃないわよ!マットレスよ!
『喋る布ッ切れなんてなんだって同じだっつーの!お前なんでそう変なものばっかり喋らせんだよ!』
あ、トンニャ来た、いい子ね~どっかの誰かさんと違って。
ねえ、あの誰かさんの表面、寝心地良かったでしょ。また寝て良いよ。
ほ~ら今壁から外すからねえ。
『わーわーわー非暴力不服従!』
意味分からないわよ。それにトンニャは喋るんじゃないもん、猫だもん。
『今マットレスって言ったくせに・・・』
マット猫なのよ!どう、この絶妙な取り合わせ。やっぱり私って天才?
『俗に言う、それと紙一重のところにいる存在だね。』
トンニャ、寝て良いよ。今これ床に置くから。
『わー!』
いや?
『嫌に決まってんだろボケナス!表面覆われると苦しいっつーの!忘却!年増!!』
……何も聞こえなかったわあ。
『すみませんごめんなさい許してください謝りますからやめてくださいお願いします』
うーん、そうねえ……鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?
『……答えないとあのもさもさを置くんだろ』
あら、物分りが良いのね。
『何でお前ってさ、それに拘んの?いいじゃんお前世界一かどうかは知らねえけどよ、きれいなんだしさ。』
え?
『聞こえなかったのか…やっぱり年のせいだな。』
失礼ね!
『鏡ごときに礼も何もあったもんじゃねえしー』
もう、揚げ足取りやめてよね。
・・・でもいいや、やっぱり今日は勘弁してあげる。
『わお、マジで?』
うん、マジで。
ね、ね、ところでさっきの本当?
『さっきのって何が?耳が遠くなったってのが?』
んもうそうじゃなくてー、私、きれい?本当に?
『……10年前はきれいだったんだけどなあ…』
トンニャ、やっぱりおいで。
『ああ、性格が顔に表れるって本当だよなあ、だから老けるんだよなあ。』
全然老けてないもん。
ばか。ばか。どうしてそう余計な知恵付けちゃったのよ。
私はただ聞いたらあなたです、って答えるようにしただけなのに。
『日々成長してますから。』
それが分かんないわ、成長なんてするはずなかったんだもの。
『お前はそれが嫌なの?こんなとこで一人でさ、おいらがいなかったらつまんねえじゃん。だからいいじゃん。』
つまんなくないわ。私、一人でも全然大丈夫だもん。
『うそだね。』
ばか!本当になんで勝手に話し出したのよ。お節介!ばか!
『こっちが聞きたいよ。あと泣くなよ。』