「あんたはどーしてそう生意気なのっ!」

響き渡った声は平らかな表面にまっすぐ反射したのでまったく効果がなかったようだ。
鏡が、ちらりと天窓からの光を反射した。

「もう一度聞くからね。鏡よ鏡、世界で…」


『一番うるさい主人はお前だね。』



"ご主人"は肩を怒らせて、持っていた植木鉢を鏡に投げつけるかのように一度振りまわした。



『土が飛ぶだろーどうせお前が掃除すんじゃねえか、ばっかだなあ~』


「うるさいうるさいうーるーさーいー!どうしてそうなのあんたは!?なんで仲良くしてくれないのよ!」


『うるさいのはおいらじゃなくてお前だって言ってるだろーが!お前みたいな年増に綺麗だなんて言えるかよ!』


「年増じゃないもん!」


『じゃあ若年寄』


「若年寄でもないってばあ!あんたなんてそれを言ったらまだ十歳よ、子供なのよ、お姉さんの言うこと聞かなきゃだめなんだから!」


『お姉さん…?誰が?どこ?……ああ嘘です嘘です。そーいや前から気になってたんだけどさ。』


「何?」


『作られてからここに来てお前が来るまで五年くらい在ったから、おいら十歳じゃねーんだけど』


「…新品じゃなかったの!?」


『お前そんなんだから騙されるんだよ。』


「騙されるって、何が。」


『分かってるくせに、なんで待つのかって言ってるんだよ。十年も。バカじゃないのかお前。』


「…ホント、あんたなんて大嫌い、鏡のくせに生意気。」


『そんなに不満なら人間にしてくれよ、お望み通り対等だぞ?』


「どうしてそんなに人間になりたがるの?」


『鏡でいるとつまらねえんだもん』


「人間だって、つまらないけどね。」



鏡の前からご主人様がいなくなったので、遅まきながらこっそりいつもの質問に答えてみる。

(だけどこれは割られても言えないのである、鏡の誇りにかけて。)

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