「会いたかったのだと思うの」
無線に向かって、わたしは呟いた。
電波が悪くて声はきっと届いていない。
雑音ばかりがスピーカから聞こえてくる。
でも構わずに、わたしはスピーカーに向かってもう少し話を続けた。
「だから、あなたから無線通信の連絡が来てもずっと無視していたのよ。ごめんね。」
寝返りを打つようにしてひとつ転がり、無線機を頭の上に投げ出しかけた。
でも、持った手を離すことは思い直して、また少し強く握った。
そうして口元にまた、持っていった。
耳元からは誰の声も聞こえず、ただ雑音だけがざあざあと心地悪い音で空間ににじり迫ってくる。
わたしはそれでも、話しかけた。
きっと聴こえている。
聞こえているといいのに。
「ごめんね。ごめんなさい。会いにきてほしかったの。無線なんかじゃいやだと思ってほしかったの。」
眠気が襲っているのか、泣きたいのか、自分でも判じ得ない。
あたたかいふとんが、背の下でつぶれている。
「聞こえてますか?聞こえてますか?聞こえてますか?」
蛍光灯の電灯はずっと変えていないので暗い。
ちかちかしてさえ、いる。
無線機の黒い堅さは手に冷たい。
「ごめんなさい。聞こえてますか?言えなかった事ばかりね。聞こえてますか…」
わたしはからだを丸めた。
そうして、毛布に顔を押し付けた。
通じないものはもう無線機なんて呼べないのでしょう。
ただの黒い塊も、わたしにとってはまだ無線機であってほしい。






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