「あなたに泣かれると、とても辛いわ。」
しゃがみこんで彼女は言った。
長い真っ直ぐな頭髪が、顔の脇を降りていた。
「私はこれでも、あなたに笑っていてほしいと思っているのよ」
なんと慈愛の深き言葉か、と彼は思った。
そして余計に涙を滴らせた。
頬に膝に手の甲にアスファルトに。
少女はそんな彼の頭に小さな手を置いた。
かきまわすようにその手を頭の上で動かしながら呟く。
「みっともないわ。あなたは大人なのでしょう」
大人だからこそ涙をためていた瓶は君と比較にならぬくらいに大きかったのだよ。
彼は声に出さず、そう答えた。
少女には勿論伝わることもない。


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