黒雲母の夜


緑の空を私は捨て、三途の川で水を飲んだ。
まずい。
死ぬほどまずい。
ありえないくらいまずい。
アタシは水に黒雲母をぶちこんだ。
持てるだけの量をぶちこむと、水しぶきが跳ねて脛にひっかかって火傷をつくりやがった。
最悪だ。
三途の川を人間がわたるなんて嘘だろう。
こんなのわたったら死ぬ。
アタシは積んであった石を蹴り飛ばして川にぼちゃぼちゃと落とした。
うっさい泣き声が隣からしたので蹴ってやった。
ざっまみろ。
アタシはそのまま肩を怒らせ、川原をずんずんと辿っていく。
緑の空もやっていられないが、黒い川原もばかにしている。
ああくそう、どうしたものか。
だいたいなんというのか、あれはストーカーか。
この数日ずっと鬼がつきまとってきて物陰からこちらをじっと見てやがるのだ。
一度なんてマンジュシャゲの花束を挙動不審にこちらに突きつけてきやがった。
アホか!
本当にアホか!!
黒雲母を敷き詰めた地上の天空が、馬鹿にしたようにアタシを見下ろしている。

三途の川の水はまずい。
それはもう、死ぬほどまずいのだ。





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