「せっかく機会をいただいたのですから、約束をしに参りました。」
少女がにこやかに笑って水兵服で小指を差し出すので思わずこちらも指を出してしまった。
「はい。指きりげんまん」
なんて懐かしい響き。
他人事のようにそんなことを思いながら小指を絡めあう。
伸ばした爪の先が間接にかすり少しだけ痛いような気もした。
少女のくせにマニキュアが黄緑色だ。
手首ごとよいのよいのと絡めた小指を縦に振る。
「嘘ついたら針千本のーます」
「はいはい」
「もう。指切った、でしょう?」
むっとしたように少女が言う。
見下ろせば低い位置の睫毛が長い。
目が合うと彼女はにこりと笑った。
「…はい、指切った!」
軽快な声が夕風に響く。
ところでいったい、彼女は誰なのだろうか。
歌うように彼女はもう一度、嘘ついたら針千本、と呟いてくすくすと笑った。
私は空を仰いだ。
そうして湿気の漂う夕暮れに、ひどく不思議な雲を見た。
茜色からか細い針が、幾千本も降ってくる。
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鈴の鳴る場所呟きの歌 (C)isuzu since2001