好きなところ

頬を挟んで耳に唇を寄せると、くすぐったそうに銀の髪が身を捩る。
「本当、」
言いかけて口をつぐみ、彼女の髪を梳いた。
「おまえが焦ると可愛いなァ」
くっ、と口の奥で笑い声を漏らすと真っ赤になったしろがねが力の入らない腕で軽く鳴海を突き飛ばすようにして叩いた。
勿論そんな程度の押し返しでは、二人の距離はこれっぽっちも離れなかったのだが。
しろがねの表情に鳴海がまた愉快そうに笑い声を立てたので、黒髪が白い滑らかな頬で小さく揺れた。
しろがねは、熱をもった頬を元の色に戻せるくらい落ちついてからふと目をしばたいて、瞳を閉じた。
「どした」
「……あなたの、」
「おう?」
「あなたの笑い声が、とても好きだなと思って」
返す言葉に窮して耳まで赤くなった鳴海に世界で一番近い位置で、エレオノールという名のしろがねは、とてもしあわせそうに微笑みを浮かべた。

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