僕だけを見ていてくれなんて今度言ったら即別れるから。
あのねえあたしはあんたなんか見てる暇ないのよ、もっともっと見なきゃいけないモノがあ・る・の。
あんたは好きよ、愛してるわ、でもねえそれってあたしがあんたを見てるってことじゃないのよ、オーケー?
だいたいあたしは間違ってもあんたの顔に惚れたんじゃないわ。
ていうかそんなこと言う時点であんたの中身すら不安になってきたけどまああんたのそーいうところ結構好きだし。
セーラー服の彼女は短いスカートをひらりと風にそよがせた。
少年はそういうつもりで言ったんじゃないよ、と言い訳のように口の中でもごもごと言った。
少女はそんな少年の同じくらいの高さにある頭に自分の顔をぐいと近づけてきっと彼を睨んだ。
少年がな、なんだよ。と赤い顔で顔を後ろへそらすと、少女は呆れかえった顔で目をそらした。
じゃ、まそれならいいんだけど。
もーいいやあたし帰る。
ついてこないでね。
少年がきびすを返した少女の手首を慌てて掴んだ。
少女が、なによと彼を睨むと少年はこころなしか頬を赤くして、それでもまじめな声で少女に言った。
でも僕は君だけを見てるから。ていうか気がつくと君しか目に入ってないよ。と真剣に言った。
そして、君が好きだからしょうがないんだ、ごめん。と付け加えて真摯な顔で少女を見た。
少女はふん、とため息をついて少年の目を射通すように見据えた。
紺色の襟と白いスカーフがさらりと風を含んで浮かんだ。
やめてよ気持ち悪いじゃない。
彼女の赤い顔に照れ隠しだと分かって、少年はうん、悪い。と嬉しそうに伝えた。
少女は、一緒に帰ってあげてもいいわよ、気が変わったの。とぶっきらぼうに言って少年の手を掴んだ。
そうして二人は木の板のある場所から草とコンクリートのある場所へと出ていった。