光が さしたような 気がした。
いつもとなりにいた少年が目の前にいるのはとても彼女には違和感があった。
正面から顔と顔を突き合わせてお互いを見るのはあまり今までなかったことだったので。
手を伸ばす。
長い方だと思う指、どうみても女性のそれになってしまった(いつからだろう?)手、どうして手は男女違うのだろう、こんなにも明らかに。
――それを、彼の頬に寄せた。
光が そこから わいてくる 気がした
彼女は彼の目を覗きこんで(けしてその視線を外しはしなかった)上唇と下唇を静かに離すと、奏でるように紡いだ。
自分でも意識しないうちに渦を捲いて天まで昇りゆくような言葉の海に注ぐ流れをくるくると紡いだ。
空気のかたまりが少女の髪をふわりと押し上げた。
蕩けるように白い足元が真っ白な泡になった。
彼女は静かに瞳を閉じた。