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『少年と少女』

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「変な夢を見たの」
机に頬杖を突いて少女が唐突に言ったので少年は予習のノートから顔を離した。
「どんな?」
「言わない」
椅子に逆に座って少年の机に肘を突いている少女は上目遣いで彼を睨んだ。
何で睨むんだろう……と思いながら、彼はどうしてと聞いた。
「変過ぎてよく分かんないの」
「ふうん」
「………」
少年の机に突っ伏して、少女は足をぶらぶらさせた。
ノートの上に乗っかった頭と広がった黒髪に困り果てて、少年はふうと椅子に寄りかかった。
「授業始まるよ」
「授業なんてどうでもいいわ」
「いいの?」
「よくない」
「よくないんだ」
「あんたサイテー」
「そうかな」
ベルが鳴った。
少女はがばっと顔を上げて、自分の席に戻った。

少年と少女