目次

春の花、揺り籠を聴く

本編
序章
一章『カナリヤ』
二章『枇杷の実』
三章『木ねずみ』
四章『黄色い月』
終章『揺り籠のうたを』
番外編
【WEB拍手おまけログ】
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あの旅から一年後。

『こーちゃん急に電話とかしないでー。彼氏に不審がられたよ』
「今、健さんと都内で飯食ってるんだけど。そうそう北海道の時の。久しぶりだし来れたら来れば……ってことなんだが無理そうだな」
『行く』
「即かよ」
「何それ嬢ちゃんオレに惚れてんのか」
『おじさん、ちょっと、聞こえてるから!違います!』


「うわマジで来た」
「おいおい彼氏いいのかよぉ。またフられちゃうぜ」
「関係ないですー。だっておじさん、連絡先教えないでどっか行っちゃったじゃない。連絡先聞きに来ただけよ」
「はぁ構わんけど。お嬢様がそんなの聞いてどうするん。使わねえだろ」
「……こーちゃんには教えたくせに。男女差別反対」
「はぁ……。おお、そういえば受付名簿見た、来てくれたんだってな。ありがとよ」
「何のことだよ」
「知らない。おじさんそれ何のこと?」
「いや、行ってないって言い張るんなら、それはそれで構わんが」



「しかし俺ってそんなに老けてるんかなぁ」
「十歳以上年上なんだから。おじさんで間違いないでしょ」
「おじさんって歳ではないんじゃないかさすがに」
「髭生えてるじゃない」
「……染井、念のため言っておくが男は誰でも生えるからな。剃ってるだけで」
「えっ」
「……すいませんねマメに剃ってなくて」


「っつーか彼氏いんだからそのくらい分かんねえの?」
「まだそういうところまで行ってないの! 余計なお世話ですから! ていうかこーちゃんに言われたくない!!」
「ひっひっひ孝二郎君サイテー」
「そんなんだからこーちゃんはフられっぱなしなのよ」
「………」
「嬢ちゃん今のヤバい。ダメージでかすぎる」


「でもね。私、おじさんの絵、好きよ。色が好き」
「そりゃ良かった光栄だ」
「あ、店員さん、それ俺の(嬉しそうだな健さん)」
「売らないの? 知り合いに融通きくよ? ……ていうかこーちゃんそれお酒。お酒でしょダメでしょ」
「うるせえな」
「嬉しいが、嬢ちゃんの値付けは高すぎるって。その値段じゃ誰も買わんよ。なァ孝二郎」
「さぁ……染井が欲しいならいいんじゃね?」
「こーちゃん黙って。私が買うなんて言ってない」
「ハイハイ、少年少女、喧嘩しない喧嘩しない」
「染井が怒ってるだけだって」
「こーちゃん拗ねて八つ当たりするの格好悪い。そうやって口が悪くて自分勝手なところ直さないともてないよ」
「………………」
「嬢ちゃん今のもなんか分からんがヤバい。ダメージでかすぎる」

なんだかんだと仲がいい。

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