目次

しんさんとしの

本編

あの夏のこと、思い出した夏のこと。

番外編

何気ないただの日々。

『夏の日々』

『冬の日々』

『ままごと』-パラレル

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01 / 「好きだよ」

コップを口に運んで、目線だけ上げると、隣の幼馴染が意地悪そうに私を見ていた。
「何?」
「好きだよ」
あっさりと言われた。
……のでふうんと答えてしばらく気付かなかった。
「そういう鈍感なところも好きだよ」
机に頬杖をついて笑い、また言われた。
私はやっと気付いて見返した。
料理用の日本酒でも飲んだのだろうか。
「酔ってるんでしょう」
「酔っていても好きだよ」
「やっぱり酔ってるじゃない、もう帰りなさいよ」
「帰らないっていったら?」
「声を出すと志郎がやってくるわよ」
二つ下の弟を引き合いに出す。
隣の部屋で受験勉強中だ。
というか私もレポートで切羽詰まっているので、あまり邪魔をしないでほしい。
受験に比べれば楽だけれど一応進級に関わるのだ。
「そうか、志野、分かったよ。でももう少しいてもいいだろう?」
「好きにすれば」
私はまたレポートを書き始めようとした。
そしたら手首を掴まれた。
掴まれたというより、多分、握られた。
「やめてよ」
「答えは?」
「何の」
「好きだよ。おまえが好きだよ。ところでおまえは私が好きかい?」
男の手と女の手は造りが違うなあと手元を見ていた私の手首をもう一度握りなおして、そう言われた。
麦茶のコースターがすっかり水を吸っている。
「もう一度言ってみて?」
「おまえは私のことが好きかい」
「そっちじゃない」
一瞬相手はきょとんとして、それからまた不敵な目になって笑った。
「好きだよ」
「そう、これからもいいお友達でいましょうね。」
手首を掴まれたままであったが、私はまたレポートに意識を戻した。

しんさんとしの
(1:好きだよ)