05 / 「うん。」
「ああ、おはよう、元気がないね」
いきなりなあいさつだと思った。
あんまりではなかろうか……一応、当たっているけれども。
「志野」
「うん」
「元気がないね?」
「うん、ないよ」
このまま、大学に行かずに授業をさぼってしまおうかと思う。
いい天気だし公園でも散歩して、そう、レディースデーだし映画でも行こうか。
なにも考えずに、喫茶店でアイスティーを飲もうか、そうしようか。
「おまえにひとつ言っておきたいことがあるよ」
「――うん?」
考え事をやめて顔をあげると、幼馴染は顔を近づけて言った。
「顔近づけないでくれる?」
「志野、学校に行きなさい。今日は学校に行きなさい。そして明日、映画に行こう」
笑って頭を撫でられて、迷惑なので手をのけた。
「そんなこと言われる年じゃありません」
「うん」
嬉しそうに、しかしあくまで余裕のある笑いをされる。
「少しくらいは元気が出たかい?」
「……まぁ悪くなってはないから、そうかもね」
「ちゃんと学校に行くんだよ?」
「分かってます」
「うん、行ってらっしゃい」
笑いながら頬を手の甲でぺしぺしと叩いてくる。
「そしておまえは明日、私と映画に行くんだよ」
「へえそう、知らなかった。残念だけど私授業があるの」
「……じゃあしようがない」
向こうは少し残念そうな目で朝の空を仰いだ。
「そう、しようがないのよ」
ありがと。と私は笑って、ちゃんと学校行きのバス停に向かった。
しんさんとしの
(5:「うん。」)
(5:「うん。」)