目次

しんさんとしの

本編

あの夏のこと、思い出した夏のこと。

番外編

何気ないただの日々。

『夏の日々』

『冬の日々』

『ままごと』-パラレル

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お父さんが外国からお酒を送ってきた。
お母さんが夜勤の隙を見て志郎がそれを勝手に開け、辰さんと飲みだした。

「……何やってるのあんたたち」

ほとんど幽霊部員と化したサークルの手伝いから遅く帰ってきて、お酒くさい居間に足を踏み入れた途端力が抜けた。
「あー、おかえり姉さん」
「志野、おいしいよこれ」
「いりません。ていうか二人とも未成年じゃない」
まあ、飲み会なら私も時々はあるのでそれを細かく言うつもりはないけれど。
私はお酒より紅茶のほうが好きだ。
ついでにいうならお酒と一緒に枝豆はあんまり好きじゃない。
この男の子達は若いのに親父くさいと思う。
「お母さんに怒られるよ。辰さんも止めたらいいのに」
「む。こいつ一人に飲ませるよりは私が手伝ったほうが潰れなくて健全かなと思ったから私なりに制御をかけているつもりって言うか」
だめだ。
酔っている。
私はテーブルまで行って、半分以下になったお酒の瓶を取り上げた。
お父さんもお父さんだ。
お母さんはほとんどお酒を飲む人ではないのに、私も辰さんも志郎も未青年なのに、なんで送ってくるのがお酒なんだろう。
「あっ! 返せよ」
「志郎、もうやめておけよ。志野も飲みたいんだよきっと」
「違います。もう部屋に帰って寝たら?」
呆れて叱り、グラスも取り上げて台所に行った。
まったくもう。
暖簾をかきあげて、流しにグラスを置いてお酒を冷蔵庫に入れる。
入れようとした。
私もちょっとだけグラスの底に注いで、それから改めてお酒をしまう。
飲んでみたら、本当に美味しかった。
明日お菓子を作るか夕飯を洋食にするかして、そこにでも入れよう。
それなら健全だ。
私は笑った。
台所の窓から月が出ていた。

しんさんとしの
(023 :洋酒風景)