24 / 四年前-3
ぱちぱちと炎がクッキーの金属模様から揺らいでいた。
私は焚き火なんてしたこともないからどうやったら安全か分からなくて、とりあえずいらない金属の箱を持ち出してきて新聞紙を詰めて、その中に今までの手紙を全部入れて、近くの雑貨店で百円ライターを買ってきた。
でも、私はライターのつけかたがどうしても分からなかった。
結局、ガスコンロで新聞紙に少しだけ火を移してから、缶の中で燃え移らせて庭に持っていった。
そうして縁側の脇で草に屈みこんで、手紙に火が浸透していくのを待っていた。
風はぬるく、残暑が厳しかった。
切ってひと月を過ぎた短い髪はようやく私の顔に馴染み始め、頬の上で緩く炎にあおられて揺れた。
宛名に香ばしい茶色がだんだん濃くなり、火が移っていく。
瞬きをした。
煙が目にしみて、目が痛くなって気がついたら引っ込めていたはずの手を伸ばしてしまった。
忘れたくない名前が炎に消える前に取り出そうとして、考える前に指が前へ出た。
近くで大きな音がしていた。
熱さと痛みを感じる直前、輝く赤い中にあった手首を強引につかみ出されて燃える箱が芝生を勢いよく転がった。
よく分からないうちに、容赦なく隣からホースが私の後ろから水を吐き出して、庭を透明な飛沫で浸して土を泥色に変えていった。
光の関係で、うっすらと七色が靄かかる。
水は当然私にもかかって、というか、わざとなのかいつのまにか私にホースの口が向けられて、たちまち髪がぐっしょりと濡れた。
七分袖の裾からもひっきりなしに水流がたれている。
私は、ホースを持ってこちらに向けている幼馴染を力なく押した。
彼は何も答えなかった。
ただホースを庭に放り投げて、蛇口を閉めに行って戻ってきて、ひっくり返って新聞紙と手紙とがぐしょぐしょに区別もつかなくなった缶を拾い上げて、縁側の網戸の向こうに消えた。
蝉の声が生温い残暑の空気でうるさく、濡れきった肌に湿気が気持ち悪かった。
風が出ていた。
空は高くて青く、夏のようでも実は秋だと思い知らされた。
バスタオルが投げられたのはどれくらい後だったか知らない。
辰さんは、お風呂のお湯の加減を見て戻ってきてから、洗面所の前に立つ私のところにきて、一度だけ私の頬を、殴るでもなく手のひらで押した。
一言もなしに、手を離した後は、背を向けて居間に戻っていった。
火傷の残る手のひらがひりひりと痛く、でも、幼馴染に心配しながら叱られて優しくされたはずの頬に残る感触が、もっと涙に近かった。
(24:四年前-3)