目次

しんさんとしの

本編

あの夏のこと、思い出した夏のこと。

番外編

何気ないただの日々。

『夏の日々』

『冬の日々』

『ままごと』-パラレル

作品ページへ戻る

珍しく閉めていた居間の引き戸をがらりと開けて現れたのは、三つ隣の向かいに住む年上の先輩だった。
先輩というより、幼馴染の友人といったほうが正確ではあるのだが。
いくら成長期を越しても敵わなかった長身が、自分を見るなりつまらなそうな顔で言った。
「なんだおまえか。志野は?」
「……姉さんなら出かけたよ」
いきなり失礼なことをいう相手に溜息をついて、志郎は振り返った。
「なに、なんか用なの」
「志野はしばらく帰らないのか?」
「そうだよ」
「そうか」
幼馴染は、すたすたと彼の傍まで歩いてきて、腰を下ろした。
そうして黙ったまま志郎のつけていたテレビ画面を見ていた。
「なんなの、竹さん」
比較的端正な横顔に向かって聞くと、志郎は彼の空気に気付いた。
「……どうしたの」
「どうもしない」
「嘘いうなよ」
辰は黙っていた。
仕方ないので、志郎も黙ってテレビを見ていた。
それでも暫くしてから、自分から沈黙を破る。
「俺に出来ることないの?」
幼馴染の青年は、志郎を横目で眺めて、それから口を曲げた。
「おまえは勉強してなさい」
「子ども扱い」
「じゃないよ。したことないよ、そんなもの」
「嘘いうなよ」
志郎の言葉に、また彼は黙った。
そうしてぽんぽんと強めに志郎の後ろ頭を叩いて、また黙ってテレビ画面を眺め始めた。

しんさんとしの
(010 :こども扱い)