珍しく閉めていた居間の引き戸をがらりと開けて現れたのは、三つ隣の向かいに住む年上の先輩だった。
先輩というより、幼馴染の友人といったほうが正確ではあるのだが。
いくら成長期を越しても敵わなかった長身が、自分を見るなりつまらなそうな顔で言った。
「なんだおまえか。志野は?」
「……姉さんなら出かけたよ」
いきなり失礼なことをいう相手に溜息をついて、志郎は振り返った。
「なに、なんか用なの」
「志野はしばらく帰らないのか?」
「そうだよ」
「そうか」
幼馴染は、すたすたと彼の傍まで歩いてきて、腰を下ろした。
そうして黙ったまま志郎のつけていたテレビ画面を見ていた。
「なんなの、竹さん」
比較的端正な横顔に向かって聞くと、志郎は彼の空気に気付いた。
「……どうしたの」
「どうもしない」
「嘘いうなよ」
辰は黙っていた。
仕方ないので、志郎も黙ってテレビを見ていた。
それでも暫くしてから、自分から沈黙を破る。
「俺に出来ることないの?」
幼馴染の青年は、志郎を横目で眺めて、それから口を曲げた。
「おまえは勉強してなさい」
「子ども扱い」
「じゃないよ。したことないよ、そんなもの」
「嘘いうなよ」
志郎の言葉に、また彼は黙った。
そうしてぽんぽんと強めに志郎の後ろ頭を叩いて、また黙ってテレビ画面を眺め始めた。
しんさんとしの
(010 :こども扱い)
(010 :こども扱い)