夕暮れにもなれば蝉はカナカナカナと物寂しげに啼き、風はほんの僅かに肌を優しく撫で付ける。
バスに乗ろうと駅のロータリーを曲がると、同じ待合ベンチに幼馴染の彼を見かけた。
「辰さん」
「ああ」
半拍の遅れで彼は肩越しにこちらを仰ぎ、手を上げて場所を譲る。
お言葉に甘えて荷物を置かせてもらった。
辰さんが肩をそびやかす。
「素直に座ればいいものを」
「何考えてるの」
呆れてこちらは笑いにもならない表情で返した。
そんな、こんな田舎の小都市(都市というほどですらないのだけれど)で、二人並んでベンチに座るなんて噂してくれと言っているようなものだ。
今更、私と彼が関係のない風を装うなんて無理がありすぎて、そこまで努力する気もないけれど、わざわざ誤解を広げるのだってばかげてる。
辰さんが何も言っていないのにしばらくして苦笑いして前を見つめる。
「まあね」
「そうでしょう」
「そうだよなあ」
そうして蝉の声。
排気ガスと別の街行きのバスの唸り、空を一筋飛行機の雲。
バスが来た。
冷房が涼しい。
一人掛けの前と後ろにそれぞれ座り、私は辰さんの後ろから肩を越えるように、彼は窓の外をぼんやり見ながら。
他愛もない会話をした。
古い商店街の外れの駅まで、二十分弱揺られて帰る。
しんさんとしの
(031 :バス停にて)
(031 :バス停にて)