帰り道を歩いていると、夕陽がひどく薄くて眩しくて、瞳と足がゆっくりと動きを止めた。
郊外の住宅街なんて、そう美しい眺めというのでもないけれども。
信号が変わって先程降りたバスが、隣を音を立てて過ぎ行きた。
と、突然後ろから伸びた手が私の頭をぽんと叩いた。
気安いその手は、位置が高い。
私は振り返らずに、かばんを持ち直した。
それからちらりと横を見た。
「一緒に歩くの、嫌だからね」
幼馴染が覗き込むように後ろからひょいと私に並んだ。
そして少し意地悪そうに目じりを下げた。
「いいじゃないか」
横からの沈む陽に照らされると、ほんのりと彼の顔の片側が眩しかった。
「今更何もどうもしないよ?」
「私が気にするもの」
歩き出した私を長いストライドで余裕をもって追いかけながら、幼馴染は試すように私を眺める。
「照れてるのかな」
「……そういう問題じゃないでしょう」
諦めて半分無視した態度で歩き続ける私の傍で、彼が薄く笑う。
「似たようなものだよ。知らない町なら一緒に歩いてくれるだろう」
私は肩を竦めた。
まあ、そうなんだけど。
「世間体だから。」
「世間体ね」
「そうなのよ」
「うん、そうだねえ」
結局そういうことなのだった。
照れているというよりは。
問題は、そこまで分かっていて辰さんがなぜ今日にかぎってこのように私に絡むのだろうなということだった。
「……」
私は立ち止まった。
幼馴染も隣で訝しげに止まった。
その顔をじっと見上げて、私はなんだ、と思った。
「志野?」
聞こえる声にそっと溜息をついて、私はなんでもないよ、とゆっくりと笑った。
じゃあしょうがない。
(015 :カンダタと夕陽)