目次

しんさんとしの

本編

あの夏のこと、思い出した夏のこと。

番外編

何気ないただの日々。

『夏の日々』

『冬の日々』

『ままごと』-パラレル

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ワンピースなんてものを久し振りに着てみると、意外に動きやすくて涼しくて、嬉しくなった。
満足して鞄を肩に掛け、一階に降りてサンダルを履く。
鞄を持ち直して玄関扉を横に引くと、ちょうど、門から辰さんが入ってくるところだった。
空が青くて、本当に雲がない。
熱い風に髪が揺れて、辰さんの色素の薄さが静かに映えていた。
石段を踏んで幼馴染が、日陰に混じる。
「あれ、志野がスカート着てる」
「変?」
「似合う似合う。デートかな」
よくこういう言葉が自然に出てくるなあと改めて感心しながら、苦笑する。
「違うよ」
「ふうん」
「ありがとうね」
「何が?」
お世辞じゃないと分かっているから、辰さんの誉め言葉は嬉しい。
手を振ってすれ違い、後ろで戸が引かれる音が蝉に被るのを聞きながら空を仰いだ。
太陽が眩しかった。

しんさんとしの
(021 :石段)