「雪だー!」
玄関の引き戸がガラガラとくぐもった音を立てた。
弟がもう一度、雪だぞ!と廊下から叫んで居間に踏み込んできた。
ジャージのままで髪も確かに濡れている。
私は取ったばかりの蜜柑をもてあそんで、皮をちまちまと剥いた。
剥きにくい。
「おかえり。廊下、濡らさないでよ」
「無感動だなー……と、うわ。いたの」
「いたよ。失礼だな」
不満げに弟が座ろうとしたのを、寝ていた幼馴染が押し戻した。
コタツの暖かい側の二角は私と幼馴染で占領されており、弟は窓側に座るしかない状況である。
「雪って、どれくらい? 雪かきしなくちゃいけないくらい?」
「そんな降らねえよ。最近じゃ温暖化だし」
「ふうん」
昔は確かに、雪が降るたび雪だるまが何個もできたのに。
最近はそんな光景も見なくなった。
そうか、とふと石油ファンヒーターの方に目を向ける。
先ほどからあまり効かないなぁと思っていたら、外が寒かったということなのだ。
蜜柑がちょっと酸っぱい。
「お袋は?」
「六時過ぎ。ごはんまだだからね。お母さん帰ってきてから」
コタツの中でぶつかる幼馴染の長い脚を、ちょっと蹴る。
右端から「ごめん」とくぐもった声がして足が引っ込められた。
「竹さん、だらしねー。みっともないぞ」
弟が幼馴染の先輩をじと目で睨んだ。
テレビはCMもあけ、六時五分前の天気予報にかわっていた。
今年も無事に冬が来た。
今日の夕飯は私の一存で、大根と白菜だらけの温かいおでんだ。
しんさんとしの
(005 :攻防in炬燵)
(005 :攻防in炬燵)