冷えているので窓を開ける。
電信柱と電線が二重に静かで、耐えていた。
雪が降った。
いつの間に降ったんだろう。
珊瑚色の空はいまもって暗く、息が白い。
ノックがした。
「何」
「志野。入るよ」
答えも聞かずに幼馴染が顔を出す。
そしてちょっと残念そうな顔をした。
「何だ。もう見たのか、折角教えてやろうと思ったというのに」
「雪のこと?」
「そうだよ。初雪だね」
勝手に入ってきて頭ひとつ分かそれ以上くらいに私より背の高い男の人は、カーテンを更に掻きやって私の斜め隣に並んだ。
少しだけ、三つ隣の向こうにある自宅を表情のない眼で見ている。
私はそれをなんとなく見た。
というか開けっ放しだと寒いのでそろそろ窓を閉めて暖房代も勿体無いから居間の炬燵に移動しようかと考える。
隣の体温があったかい。
なんで男の人というのは、弟もお父さんもだけれど、体温が高めなのだろう。
「辰さん。窓閉めたいんだけど」
「ああ。いいよ、閉めなさい」
「何? 何で辰さんが許可出してるの?」
軽く呆れて冷たい金属の桟を引いた。
結露が目立つ。
しんとした外が、窓ガラスに遮断されるとなぜか静けさがなくなるので不思議だと思った。
幼馴染は嬉しそうに笑ってカーテンを閉めた。
「ついに雪だね」
「そうね」
読んでいた雑誌を取ってドアを開けて階段に向かう。
「電気消しておいて」
「志野の部屋なのに私が消すのか」
「うるさいな」
後に残った幼馴染が少し遅れてついてきたけれど、私は電気を彼に任せて古い階段を先にきしきしとんとん、暖房を求めて早足で降りていった。
(004 :雪のほのか)