縁石に腰を下ろして、灼けるコンクリートに寝転んだ。
Tシャツから伸びた腕が日にくろぐろと焼けている。
久々のプールは、解放日の最後の日。
ぐったりするまで泳ぎきった私は、一緒に遊びに来た玖美ちゃんの夏期講習があるのにつきあって帰るかどうしようか迷って、もう少しだけ泳ぐことにしていた。
自分でも、友達がいがないかなぁと思いはしたのだけれども、
今日はあんまり高校受験のこととか考えたくなかった。
夏休みの最後の日くらいは、そういうものだ。
ジーワジーワと蝉の鳴き声のように、背中の水が熱していく。
バスタオルで髪もぐしゃぐしゃ拭いて、上手く整わないくせっ毛の塩素のにおいにぼうっとしながら、夏の私服で校庭に出た。
と、水飲み場でTシャツを絞っている幼馴染に出会った。
三回戦負けで引退したはずなのに、部活に遊びにでもきたらしい、この受験生は。
「竹河くん」
「あれ。三笠サン」
顔を上げて竹河辰くんが軽く笑う。
屈託が無いというよりも、どこか余裕そうに子供らしくなく笑う幼馴染に、少し近寄ってビニールバッグを背に回した。
「竹河くんは、部活?」
「や、ちょっと顔出してきただけ。もう帰るよ」
「ふうん。今日はうちに来るの?」
竹河辰くんは、Tシャツをナップザックに押し込めて(蒸れると思う)、青い空を木々越しに眺めた。
「まあ。行くかも」
「分かった」
「そういうことを外で言うと冷やかされるんじゃなかったのか、志野」
なんでもない口調で幼馴染がこちらに目を移す。
遠くでは部活の喧騒。
馴染んだ響きで呼ばれて、私は肩を竦めた。
「別に。いいじゃない」
「うん。私はいつでも構いやしないんだけれど、迷惑かけたら悪いだろうってね。殊勝だろ」
「何それ。迷惑じゃないってば」
もちろん冷やかされたりするのはうんざりするけれども、そういう仲でもないんだし、そもそもクラスが端から端まで違えば意外と問題にもならないのだと、今年クラス替えで学んだ。
胸を張っていればいいのだ。
「じゃあ、またあとでね」
水着とタオルのビニールバックを持った手を振り、校門の方へ小道を辿っていく。
見えなくなる手前くらいで振り返ると、こっちを見ていた幼馴染は、素直に笑って手を振った。
(025 :高校受験を控えた夏に)