目次

しんさんとしの

本編

あの夏のこと、思い出した夏のこと。

番外編

何気ないただの日々。

『夏の日々』

『冬の日々』

『ままごと』-パラレル

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17 / 一年前-2

隣に座っている弟は吊り革を見ていた。
何が面白いんだろう、と思う。
二人で伯母さんのおうちに行く、なんて微妙に年齢不相応で、どうにも違和感がある。
しかも本州を抜けて四国まで、新幹線やら電車やら、たくさん乗り継いで。
随分久しぶりだった。
父さんと母さんは、なんとか休みの取れそうな週末に来るそうだ。
弟は、すっかり私より高くなった背をもたれて大きくあくびをした。
「帰りてえ」
「まだ着いてもないじゃない」
「だから行きたくなかったんだって、最初から」
遠い遠い親戚のお葬式なんて、全く実感がわかないというのは私も同じだ。
でもお父さんによれば、小さい頃お世話になったらしいので行ったほうがいいらしい。
私ですら記憶にないのだから、弟にとっては親戚とはいってももはや名前だけの知人だろう。
今の家に引っ越す前は確かに瀬戸内海のほうに住んでいたのだから、そんなこともあったのかもしれない。
記憶にはないけれど。
弟にとって「子供時代」というのは引越しの前後からで、多分そう――辰さんと遊ぶようになったのが、物心ついて一年二年というところなのだから、それすら覚えてないんじゃないだろうか。
「姉さん」
電車の音が、なんだか心地いい。
弟の声はいつものようにそっけなかった。
「何?」
膝に置いた荷物を抱えなおし、私は弟を見上げる。
やっぱり、背が高くなった。
でもまだまだ、長身の幼馴染みよりは小さい。
「亡くなったおじいさんってのは、何親等くらいなんだろ」
「待ってね」
頭の中で計算する。
親の兄弟は、ひとつ上がってまた下がるのだったか。
「7? 8親等くらい…かな」
「直接の叔父さんになると、もっと実感あるもんなんかな。3親等くらい近くなるとさ」
電車の汽笛が鳴って、一秒ほど影が通り過ぎた。
それから緑のあふれる山道に入った。
短いトンネルだった。
「人によると思うけど」
「そういうもんか」
「そうでしょ」
彼は、小さい頃からずっと仲の良かった幼馴染のことを思っているに違いなかった。
私はほとんど会わなかったけれど、志郎は辰さんについて何度も遊びに連れて行ってもらったらしいから、余計気になるのだろう。
「仕方ないよ、志郎」
「姉さんは竹さんにシビアだよな」
「……そうかな」
「あんまり仲良くても困るけどさ」
「仲は良いじゃない」
「あれで?」
私は志郎を見て溜息をついた。
「一応ね」
「女の友情って分かんないよ俺」
「辰さんは男でしょ」
弟ってよく分からない。
二人姉弟で、仲も良い方なのに、そういうものなのかなと私は思って椅子にもたれた。

しんさんとしの
(17 :一年前(2))