ただいま、を呼ぶのも億劫なのでパンプスを脱いで引き戸を閉めると呟くだけですぐに洗面所へと向かった。
すれ違う居間からE○Vの夕方教育系番組が聞こえてくる。
残っていた靴からして辰さんだろう。
お母さんは夜勤に備えてまだ眠っているだろうから、音がいつもより遠慮がちに小さい。
それにしても非常におなかがすいた。
一日中立ちっぱなしのバイトなんて初めてしたために改めて体力の衰えを知る。
蒸れたストッキングを脱いで足首にシャワーをかけて、冷たさで少しだけ元気が出た。
手を洗って拭いたらそのまま台所へ食料作成に向かう。
いいにおいがしていた。
味噌汁と大雑把なおかずの下ごしらえと、炊飯器の蒸気が疲労にじんわりしみていく。
不覚にも感動した。
台所に既に食事が整っているのはこんなに幸せなことだったなんて思わなかった。
「辰さん。これやってくれた?」
のれんをかきやり廊下から幼馴染に話かけると畳の上で背中が手を上げて肯定の合図をした。
入っていくと妙に勝ち誇った顔で同い年の青年は扇風機に手を当てていた。
振り返って余裕げに笑う。
「偉いだろう」
「うん、すごく感謝」
「たまにはこれくらいしないとね。しかし誉められるのは気分がいいな、またやろう」
それはぜひとも願いたいところだ。
冷凍庫から抜き取ったアイスキャンデーを口にくわえたままで、裸足を床に組み降ろす。
夕風が心地よくぬるい。
労働後の扇風機とアイスはなんとも言えず格別だ。
しんさんとしの
(024 :労働後の食事に関する件)
(024 :労働後の食事に関する件)