目次

しんさんとしの

本編

あの夏のこと、思い出した夏のこと。

番外編

何気ないただの日々。

『夏の日々』

『冬の日々』

『ままごと』-パラレル

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3/Dawn Play House

カーテンを引く。
朝の光がこぼれてござの影にも時間を教えた。
空気の入れ替えで少しだけ窓を開ければ今の時間はまだ涼しい。
私は振り返って、軽くかがんで居間で寝ていた影に声をかける。
起きない。
「辰さん」
もう一度読んでみると今度は身じろいだので膝を折りがてら額を叩いてみた。
「辰さん。起きて、朝。あとここは居間。うちの。わかる?」
「……ん」
「寝なおすんなら布団出してあげるから。一回は起きて」
幼馴染は嫌々ながらという風に目を開けた。
朝風が吹いて初夏の風鈴を涼しげに鳴らす。
「おはよう」
「ああ。おはよう…」
寝起き特有の掠れ声で辰さんが笑い、瞬きをする。
そしてふざけたことを呟いた。
「なんだって私はここにいるのかな」
「起きてきたら寝てたから起こしました。私にも分かりません」
「なんだつまらない。もっと色気のあるほうにひねってくれればいいのに」
「……あのね」
ばかかこの人は。
付き合っている時間は時計を見るともうなかった。
今日は早くに出なければいけない。
まだ夜明けたばかりで空はほんのり薄白いままだけれども。
「私あと三十分くらいで出かけるから、辰さん朝ごはん一緒に食べる?」
「食べる」
「じゃあ起きてね」
言い捨ててお母さん達の寝室の前だけは静かに歩き、台所で簡単に朝を作る。
辰さんは戻ってくるとまた寝ていた。
私の気配でそれでもすぐに目を開けた。
「ごはんですけど」
「志野、よく思うのだけれど」
「うん? はいお箸」
受取ったまま幼馴染は私を見ないで箸を持ち直した。
「おまえがいてよかったと私は思う」
「ありがと。先に食べるね」
一度だけ幼馴染の青年を見てから、私は味噌汁に口をつけた。
幼馴染は何か言いかけるようにしてからやめ、静かに隣で、いただきますと両手を合わせた。

『ままごと』 (3:Dawm Play House)