目次

しんさんとしの

本編

あの夏のこと、思い出した夏のこと。

番外編

何気ないただの日々。

『夏の日々』

『冬の日々』

『ままごと』-パラレル

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炬燵で目覚めた。
視線の先にはいつ訪れたのか知らないけれど、幼馴染が同じように隣で、座布団に頭を預けてくうくうと寝ていた。
天井をぼんやり仰いで、幼馴染に視線をやって、炬燵をずらさないように起き上がる。
時計は七時過ぎだった。
志郎もお母さんもまだ帰っていないみたいだし、いったい何をやっているんだろう。
お父さんは明日帰ってくるのに、奥の部屋も片付けていないし。
とりあえずこれからでも夕食の準備はしておかなくてはいけない。
炬燵から足を抜くとすっきりと涼しく、思わず伸びをした。
骨が軽く擦れ合う音を耳にして首を回し、それから膝をずらして幼馴染の上に屈む。
すっかり男の人になってしまったなあと思う。
面影は昔のままだけれども。
前髪をかきやって額を叩いた。
「辰さん」
「……ん」
「おきて」
肩をやや乱暴に揺すると目が開いた。
見下ろしている私の視線を受けて、眠そうにまた目を閉じたのでもう一度揺すった。
「辰さん。ちょっと、もう」
「分かってるって……」
「分かってないでしょう。夕食作るの手伝って」
「んー」
やっとのろのろと身体を引き、炬燵を斜めにして整った顔が眠そうに私の上に来た。
それから髪をがしゃがしゃとかきまぜ、私を眺めた。
「ああ、志野も起きたのか」
明らかに寝惚けている。
私と違ってどうも寝起きが悪い。
電話が鳴った。
私が出た。
志郎がごはんを外で食べてくると言った。
全くみんな勝手だ。
辰さんが、子機をソファに投げ捨てて座る私を余裕そうな笑みで眺めて手を振った。
「そう怒るな怒るな。私が作ってあげよう」
「あ、本当?」
それは嬉しいかもしれない。
見上げた顔がさらりと頷いて、居間のカーテンを閉めた。
「いつもお世話になっているし、たまにはね。あーと……冷凍物とかも好きに使っていい?」
「ん。見る」
そういえば牛肉が余っていたような気がする。
――なんだかんだで私も台所に行って、手伝って、お母さんが帰ってくるのを待って三人で食べた。
辰さんの料理は味付けがとても薄い。
味がないのではなく、味付けが薄い。
白米の白い湯気をお茶碗によそって、彼におかわりを手渡す。
結局二人で作ってしまったけれど、たまにはこんなのもいいだろう。

しんさんとしの
(001 :白米の蒸気)