目次

しんさんとしの

本編

あの夏のこと、思い出した夏のこと。

番外編

何気ないただの日々。

『夏の日々』

『冬の日々』

『ままごと』-パラレル

作品ページへ戻る

「好きだよ」、
というそれだけのことを言うために、いろいろなものを諦めたのだった。
きっとあれは一つの自殺だったのだとだいぶ後に振り返ってから気付いた。
思うままに言葉を投げてみて、彼女が間違えたのならそれで終わりだった。

志野は一度も間違えなかった。
ただ、彼に対して生きていいよとそれだけを淡々と伝えてきただけだった。

雀が鳴き、丈の高くなった田は実り始めている。
長い長い町内の散歩を朝日を背にして、終わらせることにした。
風は涼しくも暑さの予感を秘めている。
夜明けてすぐだというのに、おかしいことに、こういう時に限って志野はきちんと起きていて、生垣の向こうで風を膨らみ髪を吹かせるままにそこにいた。

きっとこれが最後の自殺の試みで、
彼女はやはり間違えないだろう。

しんさんとしの
(033 :ミチワカレの朝焼け)