目次

しんさんとしの

本編

あの夏のこと、思い出した夏のこと。

番外編

何気ないただの日々。

『夏の日々』

『冬の日々』

『ままごと』-パラレル

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1/Night Play House

九時半になっても両親が帰ってこないのは良くあることであったけれど、弟が帰ってこないのは久し振りだった。
余ってしまった夕食にラップをかけて悪くなるので冷蔵庫にしまう。
冷蔵庫の唸りに重なって閉まり悪い蛇口から何度か水滴が落ちていた。
裏口に出て生ゴミ袋をひとつ避難させ、ふとサンダルを土に擦った。
蛙が鳴く。
今日は半月がきれいだ。
縁側に回ればもっとよく見えるだろうか。
「志野。CM終わってるよ」
裏口から漏れる光が広くなって幼馴染の影が長くかかった。
今日はドラマのクライマックスだ。
月から目を離して台所へと急いで戻る。
幼馴染が避けてくれたのでサンダルを脱ぎ、数歩でのれんをくぐって居間へと戻った。
どこか遠く裏口の鍵が閉まった。
やや遅れて戻ってきた辰さんは、苦笑して座ろうとしてやめた。
「麦茶、入れるけど飲むよね」
「うん」
「氷は?」
「うん」
生返事をして私は美しい音楽と後悔に一言を吐き出す年配の看板脇役に見入っていた。
辰さんは肩を竦めて廊下へと戻ったらしかった。
『それでも、まだやれることがあるでしょう』
諭す女優。
わめく高速道路。
からからと澄んだ氷の音がした。
隣に気配がして、幼馴染が座っていつのまにか同じ画面を見ていた。

『ままごと』 (1:Night Play House)